読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

じぶん・この不思議な存在【所感】

『じぶん・この不思議な存在』講談社現代新書。1997年発行。

著者

鷲田清一京都大学文学部卒、同大学院博士課程修了。哲学・倫理学専攻。

目次

プロローグ

1-爆弾のような問い

2-じぶんの内とじぶんの外

3-じぶんに揺さぶりをかける

4-他者の他者であるということ

5-〈顔〉を差し出すということ

6-死にものとしての〈わたし〉

エピローグ

所感

 アイデンティティ―この語の意味を「その人が何者であるかを示す自我の核」というように、わたしは高校の倫理の授業で習った。さらに「青年期にはアイデンティティの確立が求められる。しかし、それには長い時間を要するから、青年期は大人としての社会的責任や義務から猶予されている。この期間をモラトリアム期間という。」と。

 それ以来、わたしの頭の片隅には、アイデンティティを確立しなければいけない、という切迫感のようなものが、常にあった。そして、大学に進みモラトリアム期間が過ぎていく中で、一向に「自我の核」なるものが見えてこなかったとき、切迫感に不安が加わった。

 本書では、「わたしはだれ?」という問いの分析からはじめ、アイデンティティの意味、その確立の仕方まで思索していく。最終的に、「わたしはだれ?」という問いの一つの答えにたどり着くが、「〈わたし〉とはいったいなんなのだろうか」という疑問で終わる。人間の思想の深さを感じさせられる。

 本書には、こういう問いを考えるうえで切っても切り離せない分野であろう、言語学の考え方がところどころに含まれており、その部分は概して難しかったが、反面その分野へも興味をそそられた。また生活に即した具体例数多く盛り込まれており、理解を助けてくれた。

 読み終わったとき、わたしが感じていた切迫感や不安は幾分弱まり、気持ちが楽になった。それは、著者が与えてくれたアイデンティティの意味と「わたしはだれ?」という問いに対する一つの答え、によるところが大きいだろう。

 わたしのようにアイデンティティに関して漠然と不安を感じている方はもちろん、人生や物事を考えるときに、ガチガチにきっちりと考えすぎて、うまくいかないことがある方は読んでみるといいかもしれない。