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ことばと文化

言語

『ことばと文化』岩波新書 1973年発行

・著者

鈴木孝夫。1926年生まれ。1947年慶応義塾大学医学部予科卒業。1950年同大学文学部卒業。言語社会学専攻。

・目次

まえがき

1 ことばの構造、文化の構造

2 ものとことば

3 かくれた基準

4 ことばの意味、ことばの定義

5 事実に意味を与える価値について

6 人を表すことば

あとがき

・所感

まえがきに、この本の目的は、「ことばというものが、いかに文化であり、また文化としてのことばが、ことば以外の文化といかに関係しているかを、できるだけ平易なことばで明らかにすること」とある。ここで、文化とは、「ある人間集団に特有の、親から子へ、祖先から子孫へと学習により伝承されていく、行動及び思考様式上の固有の型(構図)」と捉えられている。

この目的に即して、第1章では、文化の構造とことばの構造に関して、次のような共通点が述べられている。

文化の単位をなしている個々の項目というものは、一つ一つが、他のさまざまな項目との間で、相対的に価値が決まっていくものである。これと同様に、どの単語も、そのことばを含む言語のなかで、他のことば、殊にそれと近縁類似のことばと密接な相互対立関係に立っている。外国語を理解するには、この関係を構造的に把握しなければならない。

また、第2章では、要約すると、

ものとことばの関係は、客観的に存在するものを人がことばによって表現するというよりは、ある特殊な見方、現実の切り方が集約されたものとしてのことばが、私たちに、そのような特徴、性質をそなえた事物が、そこに存在すると思わせると考える方が、言語学的に見て妥当。したがって、同一のものに対する人々の見方、価値の置き方は文化により千差万別であるから、これを分節することばの構造は非常に違ってくる。

と述べられている。

このように、ことばと文化の関係を、言語学のものの見方から説明されている。また、ことばや文化に関して、一般の人や、時に専門家までもが盲目的に陥ってしまっている思考形式の誤りが、所々で指摘されていて、ハッとさせられる。

それぞれの議論は、具体的なことばや文化項目を例に、日本と諸外国を比較してながら、説明されているから、非常にわかりやすい。発行されたのが40年以上前だけあって、具体例のなかには現代との感覚のずれを感じられるものもあるが、当時の時世を感じられ、楽しい。

言語学の知識がほとんどない私にも、面白かった。著者が言うように、ことばの研究の入門書として、手ごろな一冊であると思う。