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新しい免疫入門【所感】

『新しい免疫入門』 ブルーバックス 2014年12月発行

著者

審良静男

1953年生まれ。大阪大学大学院医学研究科博士課程修了。医学博士。現在、大阪大学免疫学フロンティア拠点長・教授。

黒崎知博

1955年生まれ。京都大学大学院医学研究科博士課程修了。医学博士。現在、大阪大学免疫学フロンティア研究センター特任教授、および理化学研究所統合生命医科学研究センター分化制御研究グループディレクター。

目次

プロローグ

1章 自然免疫の初期対応

2章 獲得免疫の始動

3章 B細胞による抗体産生

4章 キラーT細胞による感染細胞の破壊

5章 三つの免疫ストーリー

6章 遺伝子再構築と自己反応細胞の除去

7章 免疫反応の制御

8章 免疫記憶

9章 腸管免疫

10章 自然炎症

11章 がんと自己免疫疾患

 所感

 免疫システムの大まかな流れと、免疫研究の現在地を記した入門書。著者は免疫研究の第一人者で、大学でこの分野の講義を聞いていても、よく名前を耳にする。特に審良氏は、ノーベル賞にもかなり近かったらしい。

 医学書に欠かせないのはわかりやすい図であるが、ブルーバックスという本の版型の都合上か、図は少ない(本書は医学生向けではなく一般向けであり、そもそも医学書といえるかわからないが)。しかし、それでも理解が難しくないように、重要な部分は何度も繰り返し書き記し、比喩などを用いて説明している。免疫システムの超重要なポイントに絞って大まかな流れをつかむことに主眼を置いて書かれているため、すらすらと読み進めることができ、読み終わったときには免疫システムの流れをつかめている。

 また、わかりやすい入門書とはいえ、内容は免疫の中核についてであり、盛んに研究が行われている対象についてであるから、最新の知見にも随所で触れられている。まだわかっていない部分については、「まだわかっていない」と書かれており、今読んでいる部分が研究の最先端であると実感できる。

 個人的には、免疫学の研究の医療への応用について書かれている部分が最も面白かった。特に、がんに対するがんペプチドワクチン療法や、自然炎症と糖尿病、動脈硬化アルツハイマー病の関係などは、将来自分がなりえるかもしれない疾病であるだけに、興味深かった。本書に書かれていた事実を見る限り、今後医学のなかで免疫学の重要性がさらに増すことは間違いないだろう。

 すぐれた一般向け医学書を読むたびに思うのだが、このような本がもっと多くの人に読まれたら、読んだ人の健康に対する意識が向上し、健康で病院に通わず暮らすことができる可能性が高まり、医療費も削減され、いいこと尽くしだろうに。超少子高齢化が進み、医療費が国庫を苦しめている日本のためにも、本書のような優良な入門医学書がたくさん出版され、多くの人の手元に届くような社会になればいいのにな、と思う。