『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』福岡伸一著【所感】

動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』木楽舎 2009年発行

著者

福岡伸一 

1959年生まれ。京都大学農学部卒。同大学大学院農学研究科博士後期課程修了。ロックフェラー大学研究員、ハーバード大学医学部研究員などを経て、現在、青山学院大学教授。専攻は分子生物学

目次

プロローグー生命現象とは何か

第1章 脳にかけられた「バイアス」

第2章 汝とは「汝の食べたもの」である

第3章 ダイエットの科学

第4章 その食品を食べますか?

第5章 生命は時計仕掛けか?

第6章 ヒトと病原体の戦い

第7章 ミトコンドリア・ミステリー

第8章 生命は分子の「淀み」

あとがき

 所感

 『生物と無生物のあいだ 』の著者、福岡伸一氏による、それの2年後に発行された書である。かつて著者が二つの雑誌で連載していた記事を加筆、編集してまとめものである。

 内容は章ごとに独立していて、生物学的テーマについて著者の様々な思索が述べられている。その内容には食生活など生活に即したものもある。『生物と無生物のあいだ』では生命科学分子生物学の研究や発展の歴史や、専門的な生命現象が話題の中心だったが、本書はより生活に身近なことが話題となっている。一般の方がより楽しめる内容といえるだろう。

 全体的に、生命と自然の複雑さを軽視する我々の生命観・自然観やバイオテクノロジーを戒告する論調である。たとえば、食に関して書いた章では、我々の無知蒙昧な消費行動や、自社の利益を最優先する遺伝子加工食品会社、生命を侮り自由に操作しようとした遺伝子工学を痛烈に批判している。一消費者であるわたしも自分の行動を見直させられた。

 本書の中に登場する人物やエピソードには、『生物と無生物のあいだ』にも書かれていたものがいくつかある。ES細胞の発見とノックアウトマウスへの応用やイワノフスキーによるウイルスの発見、生体内の分子の動的な流れを明らかにしたシェーンハイマーの実験などである。知ってる人物に出会ってちょっとうれしくなる一方、やや新鮮味に欠けた。

 私個人の感想としては、私自身が分子生物学も関係する学問分野に身を置いていることもあり、『生物と無生物のあいだ』の方が分子生物学研究者の生活や態度を垣間見られた点で、参考になり、面白かった。しかし、この分野を専攻しない人やいわゆる理系ではない人たちにとっては、本書の方が生活に即している分楽しめるかもしれない。いずれにせよ、この著者の本は面白い。今後ほかの著作にも手を伸ばしてみようと思う。

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