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人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの【所感】

コンピュータサイエンス

人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』

KADOKAWA 2015年3月発行

著者

松尾豊

東京大学工学部卒業、同大学院博士課程修了。産業技術総合研究所研究員、スタンフォード大学客員研究員を経て現在、東京大学大学院工学系研究科准教授。専門分野は人工知能、ウェブマイニング、ビッグデータ分析。人工知能学会では倫理委員長を務める。

目次

はじめに

序章 広がる人工知能人工知能は人類を滅ぼすか

第1章 人工知能とは何か―専門家と世間の認識のズレ

第2章 「推論」と「探索」の時代―第1次AIブーム

第3章 「知識」を入れると賢くなる―第2次AIブーム

第4章 「機械学習」の静かな広がり―第3次AIブーム①

第5章 静寂を破る「ディープラーニング」-第3次AIブーム②

第6章 人工知能は人間を超えるか―ディープラーニングの先にあるもの

終章 変わりゆく世界―産業・社会への影響と戦略

おわりに 

所感

 いま最もホットな学問分野であろう、人工知能に関する本です。最近、人工知能に対する世間の注目度は高く、マスメディアを通して「人工知能」という言葉を耳にしない日はないといっても過言ではないと思います。わたしも興味を持ったのでこの本を読んでみました。

 著者は人工知能関連の書籍を多く出版されている松尾氏。「はじめに」や「おわりに」に書いてあるのですが、2012年から2014年まで人工知能学会の編集委員長を務めていた著者は、人工知能の現在と可能性を世の中の人に正しく知ってもらい応援してもらいたい、という思いが強いようです。また、いまの人工知能ブームを一過性のものにしてはならない、ブームが去った後研究が落ち込むことがないようにしなくてはならない、という強い責任感を持っているようです。この思いの背景には、これまで人工知能研究が経験してきた、2回のAIブームとそれが去った後の冬の時代という苦しい歴史があるようで、そのことについては本書内で語られています。

 本書は世間に人工知能を正しく知ってもらうために、そもそも人工知能とは何かを考えたあと、人工知能研究の歴史とその時代時代の技術について解説し、その後人工知能の飛躍的発展を成し遂げた、そしてこれからも成し遂げるであろうディープラーニングについて説明します。最後に、このディープラーニングによって今後人工知能が獲得するであろう能力と、それが社会や産業に与える影響を予想します。

 ところで、人工知能といえば、「シンギュラリティ―人工知能が人間の知能を超えること」が大きな問題となっており、それの結果人工知能が人間を絶滅させる恐れがあると著名人が警鐘を鳴らしていることは、多くの人が周知のことと思います。シンギュラリティが起こるとわたしたち人間が絶滅する可能性があるのですから、多くの人がこの問題に関心を持っています。この問題について、松尾氏も本書内で語っており、そこでは、人工知能が人類を超える日は来るが(そもそも松尾氏は、人間の脳をコンピュータで実現できないはずがないという立場)、その知能が暴走して人間を征服したり絶滅させたりすることはないと断言されています。

 しかし、ここでちょっと問題がややこしくなっています。というのも、どうも人工知能に関する「シンギュラリティ」という言葉の定義には2種類あり、どちらの定義を使うかによって、シンギュラリティが起こるか否かの意見が違ってくるようだからです。シンギュラリティの2つの定義とは、上に書いたように、単に「人工知能が人間の能力を超えることで起こる出来事(wikipediaより)」とするものと、本書内に書かれている「人工知能が自分の能力を超える人工知能を自ら作り出せるようになる時点」とするものです(わたしは素人ですので、この辺の認識について誤りがあるかもしれません。すみません)。松尾氏は、人類の知能を超える人工知能は現れるが、人工知能人工知能を作り出すことはないと述べています(その理由も書内では述べられています)。すると、シンギュラリティの定義を、前者の立場をとれば、松尾氏はそれが起こると予想していると言えますし、後者の立場をとれば、それは起こらないと予想していると言えます。そして松尾氏は後者の立場ですので、彼の予想をまとめると、「人類を超える人工知能はいずれ現れるが、シンギュラリティを迎えはしないし、人類が絶滅することもない。」というものなると思います。(シンギュラリティという概念については、今後これ関連の本を読んでいく中で認識を深めたいと思います。)

 以上のように本書には、人工知能研究の過去、現在、予測できる範囲の未来と社会への影響、そしてシンギュラリティに関して、正直にわかりやすく書かれています。最近話題になってるけど人工知能って何ぞやという人や、人工知能に関して一通り知っておきたい人が最初に読むのに適した一冊であると思います。

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