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人工超知能が人類を超える シンギュラリティ―その先にある未来

コンピュータサイエンス

 前記事に続いてシンギュラリティ関連の本です。

『人口超知能が人類を超える シンギュラリティ―その先にある未来』 

日本実業出版社 2016年3月発行

・著者

台場時生

某大学理工学部准教授。研究分野はロボット工学。

・目次

はじめに

序章 シンギュラリティを前に

第1章 シンギュラリティがなぜ問題になるのか

第2章 私たちはどこから来たのか

第3章 科学技術の進歩と人類の進化

第4章 そして、人類のゴールへ

終章 シンギュラリティ後の人類ビジョン

おわりに

  

・所感

 シンギュラリティについて、進化の観点から論じた書。人工知能とはどういうものか、人工知能は現在どんなことができるのか、といったことの説明は極力省かれ、シンギュラリティは避けられない出来事であるとして、シンギュラリティが抱える問題に真正面から立ち向かう方法を示しています。

 著者によると、シンギュラリティが抱える問題は、よく言われている人工知能が人類を絶滅させるかもしれないリスクの問題を解決すれば済むものではないと言います。なぜなら、シンギュラリティ後には、人間は機械とつながれてサイボーグになったり、完全に機械化したりする可能性があるからです。つまり、現在の人間観では考えられない姿に変わってしまう可能性があるため、そのことに関する議論なしに、ただ人工知能の暴走のリスクが排除されたからといって、シンギュラリティを迎えても大丈夫ということにはならない、というのが著者の主張です。そして「人類はシンギュラリティをどのように迎え、どこへたどり着きたいのか」を考える為には、「人類とは何か」、「生物とは何か」という問題にまでさかのぼり、そこから人類の未来像「人類は最終的にどこへ向かうのか」を考える必要があると言います。すなわち、「過去から未来にわたる”人類の一生”をデザインする」ことが大切であると。

 本書では、序章で人類の未来像を描くことの重要性を提起し、第1章でそもそもシンギュラリティに伴ってどのような問題が生じるのかを簡単に示します。第2~4章では、宇宙の始まりから人類の誕生までをふりかえり、そこからヒントを得てシンギュラリティ後の未来を展望します。そして終章で、これまで見てきたシンギュラリティとその後の世界を迎えるにあたり、あるべき人間一人ひとりの姿、人類全体の姿を提示しています。

 

  個人的に面白かったのはシンギュラリティは生物進化の必然的過程であるとする著者の主張です。

 著者によると、地球に生命が誕生してからの40億年、生物は突然変異と自然淘汰によって「生物学的進化」を続けてきた。そのゴールが「手、口、頭」を手に入れた我々人類である。生物学的進化のゴールにたどり着いた人類は、より効率よく「個と種の保存」を達成するために「科学技術的進化」へと移行した。これには、すでに人類が達成した農業革命、産業革命、情報革命、さらにこれから達成するであろうロボット革命、生物革命があり、この科学技術的進化のゴールがシンギュラリティである。この二つの進化の目的は「個と種の保存」であり、これはシンギュラリティによって完全に達成される。シンギュラリティによって不老不死になり、「個と種の保存」という目的を失ってしまった後も、人類は幸福感を求めてさらに進化を続ける。ここで起こる進化が「非生物的進化」であり、これのゴールは「全知全能」である・・・

 著者は、シンギュラリティを「個と種の保存」を目的とした進化が到達する必然的なゴールであるとし、仮に40億年前の地球に戻ってもう一度共通祖先の誕生から進化をやり直しても、やがて人類のような「手、口、頭」を獲得した種が誕生し、その種が「科学技術的進化」に移行してシンギュラリティを達成するだろうと述べています。この、地球での生物進化をもう一度やり直しても、いずれなんらかの種がシンギュラリティを達成するだろうという主張は、そのようなことを考えたこともなかった私には非常に刺激的でしたが、言われてみるとそうかもしれないと思いました。

 このような、シンギュラリティを進化の必然の帰結とする台場氏の考えは、前回紹介した『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの 』を書いた松尾氏とは異なっており、面白いですね。 

 

 本書は、話の展開に一本の筋が通っているので、私のような読書初心者でも流れを見失いにくく、読みやすかったです。人工知能研究の歴史や技術解説などに関してはほとんど書かれていませんが、シンギュラリティ後の世界を想像し、それをどう迎えるかを考えるためのヒントになる良書だと思います。