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ドキュメント 滑落遭難

『ドキュメント 滑落遭難』山と渓谷社 2008年発行

著者

羽根田治

1961年埼玉県生まれ。フリーライター。山岳遭難や登山技術の記事を、山岳専門誌『山と渓谷』や書籍などで発表している。また、沖縄、自然、人物などをテーマに執筆活動を続けている。

 目次

富士山 2007年4月

北アルプス北穂高岳 2001年9月

大峰山脈釈迦ヶ岳 2006年5月

赤城山・黒檜山 2007年1月

北アルプス・西穂独標 2007年3月

南アルプス北岳 2007年6月

近年の事例 埼玉県警山岳救助隊からの報告

 所感

 羽根田治氏が実際の遭難事故を取材し検証した書。シリーズ化されており、他に『ドキュメント 道迷い遭難』『ドキュメント 気象遭難』『ドキュメント 生還』などがある。

 本書では、全国の山で起きた6件の滑落遭難事故と、埼玉県内の山で起きた数件の事故が取り上げられている。前者が紙面の大部分を占め、後者は最後の章にまとめられている格好である。当事者、同行者、家族、山岳救助隊などへの取材をもとに、事故が起きた状況が説明されている。それを元に事故の原因を検証し、読者に注意を促している。

 ここで、取り上げられている6件の事故の①起こった場所②時期③当事者の年齢性別④滑落の状況⑤けがの状態をまとめてみたい。

1、富士山

①富士山8合目②4月③31歳男性④前を行く仲間を急いで追ったときにモナカ雪に足を取られバランスを崩して500m滑落⑤右大腿骨骨折

2、北穂高岳

北穂高岳北穂池直上②9月③66歳男性④ヤッケを歩きながら脱ごうとしたときに浮石でバランスを崩し5m滑落⑤右下膝6針縫う

3、大峰山脈(2件の事故)

大峰山脈釈迦ヶ岳頂上北側手前岩場②5月③60歳女性④疲れや悪天候などの要因が重なったか、150m滑落⑤首骨折即死

大峰山脈前鬼登山口手前登山道一部崩壊箇所②5月③69歳男性④登山補助用ではないロープを誤って掴み10m滑落⑤脳挫傷

4、赤城山・黒檜山

①黒檜山西面沢②1月③55歳女性④道迷い中、15mの涸れ滝を転落⑤低体温症による凍死

5、西穂独標

①西穂独標ピーク南側手前岩塊②3月③35歳男性④ピッケルが雪に刺さらず、バランスを崩し400m滑落⑤肋骨1本骨折

6、南アルプス北岳

北岳南主稜線トラバースコース②6月③47歳男性④ピッケルなしで雪渓を横断中、滑って100m滑落⑤頭蓋骨陥没骨折、頚椎亀裂骨折、左手腱損傷

 

 熟練者でも滑落しうること、危険には見えない個所でこそ滑落しうること、滑落したら高山ではなくても死亡しうることがわかる。

 この本の存在意義は、なんと言っても、登山を趣味とする人たちに山の危険性を再認識させることだろう。山での滑落事故は、もちろん不可避だったものもあるが、しっかりと装備を整え注意を払っていれば避けられたはずのものや、重大事故に陥らずに済んだはずのものも多いと聞く。登山者に油断をもたらすのは、これまで事故を起こしたことはないし自分は大丈夫だろう、という過信ではないか。本書は熟練者でも思わぬ瞬間に思わぬところで滑落事故にあうことを記し、「初心忘れるべからず」を教戒する。

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ドキュメント 滑落遭難 (ヤマケイ文庫)

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