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ゲノム編集の衝撃 「神の領域」に迫るテクノロジー【書評】

『ゲノム編集の衝撃』NHK出版 2016年7月発行

著者

NHK「ゲノム編集」取材班

目次

序文 「ゲノム編集とiPS細胞―人類の未来のために」山中伸弥

はじめに

第一章 生物の改変が始まった

第二章 ゲノム編集、そのメカニズム

第三章 起爆剤、クリスパーキャス9~爆発的広がりをアメリカに追う

第四章 加速する「ゲノム品種改良」

第五章 超難病はゲノムから治せ

第六章 希望と不安のはざまで~困惑する研究現場

おわりに

インタビュー 「ライフサイエンスの先端をいくために」山本卓

所感

 2015年7月に「クローズアップ現代」で取り上げられたゲノム編集について、その番組の取材・製作チームの取材をまとめた本。

 ゲノム編集技術についての本というより、ゲノム編集についての取材記という内容。番組を作るにあたり、記者たちがこういう理由でこういう人に取材をしこういう感想や疑問を抱いた、ということが記されている。技術の説明には深入りしていないため、ゲノム編集について詳しく知りたい読者には少し物足りない内容となっていると思う。

 また、読者にゲノム編集の衝撃を認識させようと意識しすぎたためか、記者の感想が「すごい技術だ」「画期的なことだ」というようなものばかりで、それが逆に衝撃の大きさを見えなくさせているように思う。本当に重要なことがぼやけてしまうし、記者たちがそれを理解しているのかに疑念が生じる。本書内には記者たちが何も知らない人たちにどう伝えればよいか苦心したことが書かれており、実際わかりやすく説明がなされているとは思うが、簡単に書こうとするだけでなくもう少し深い考察を添えた方が逆に読者の理解が進むのではないか。万人が見る可能性があるテレビの番組ではなく、興味を持った人が読む本なのだから、なおさらそういう内容が求められていると思うのだが。

 これは取材というスタイルの弊害でもあるだろう。研究者たちは取材を受けた際に自分たちの研究の成果や応用可能性を強調するだろうし、記者たちも取材を続けるために研究者と将来にわたる良好な人間関係を作っていかなくてはいけない。結果、研究者たちの言葉を復唱したり、研究の成果が強調されたような記事になってしまう。これは取材の性格上ある程度は仕方のないことでもあると思う。

 厳しい評価をしてきたが、ゲノム編集について書いた本が少ない現状では、本書はゲノム編集に興味を持った人の選択肢の一つであると思う。

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ゲノム編集の衝撃―「神の領域」に迫るテクノロジー