藤井聡太四段ついにデビューから20連勝

今回は藤井聡太四段について書きます。以前一度このブログで、将棋をあまり知らない人でもわかるように藤井聡太四段の話題性・強さの秘密を取り上げました。

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 上の記事を書いたのは5月19日、この時点でデビューから18連勝中でした。それから約2週間たちましたが、いまだ負け知らず、デビューからの連勝は ついに20へ到達しました。いやはや、恐ろしいです。

 19勝目の相手は近藤誠也五段、竜王戦ランキング戦6組決勝戦でした。これに勝った方が本戦トーナメントに駒を進めることができるという大一番でした。

 もはや藤井四段の対局となると、藤井四段に注目が集まりすぎて対戦相手が軽視されがちですが、近藤五段も一般的には天才です。昨年は若干二十歳にして王将戦で予選を勝ち抜き挑戦者決定リーグに進出し、そこで羽生善治三冠に勝つなどの活躍をしました。最も有望な若手の一人で、将来タイトルを獲ることが確実視されています。ちなみに私は中学生の時に当時小学生の近藤五段と対局したことがありますが、コテンパンにされました。この子は将来絶対プロ棋士になると思った記憶があります。

 この近藤―藤井戦、プロ棋士の前評判では近藤ノリの方が多かったようです。いくら藤井四段が規格外とはいえ、近藤五段の実力を考えると、私にもこれはかなり妥当な予想だと思えました、、、そう、対局が始まるまでは。

 ふたを開けてみると、藤井四段が一方的に攻め潰して勝ちました。藤井四段が良くなってからは本当に一方的でした。思うに、近藤五段は異常とも言える報道陣の多さ、注目度の高さ、その雰囲気にのまれてしまったようです。全く力が出せていない印象でした。一方の藤井四段は、そのような雰囲気にもうすっかり慣れてしまったのか、それとも元から気にならないタイプなのかわかりませんが、いつも通り指していたように思います。藤井四段と戦うには、盤外の雰囲気とも戦わなければいけない状況になっています。

 いずれにせよ、プロ棋士の前評判をひっくり返して圧勝した藤井四段、将棋ファンの感想は「強いとはわかっていたけど、まさか勝つとは、いや桁違いなんだからそりゃ勝つよなぁ、いやいやしかしまさかなぁ、まぁでもそりゃそうか」という感じでしょうか。「まさか」と「やっぱりな」が混在しているように思います。そしてこれからどんどん「やっぱり」「当然」が増えていくのでしょう。

 20勝目の相手は澤田真吾六段、棋王戦予選の決勝戦で、これも勝った方が挑戦者決定トーナメントに進出できる大一番でした。

 例によって澤田六段も天才です。近藤五段にせよ澤田六段にせよ、予選決勝まで勝ち残るのは活きの良い若手が多いのですね。澤田六段は現在25歳でこれまでに数々の棋戦で好成績を残してきた若手の有望株、もはやいつタイトルに挑戦してもおかしくない実力者です。恐らく藤井四段のこれまでの公式戦20戦の相手の中でも1,2を争う強敵でしょう。ちなみに、私は澤田六段と同世代ですが、彼が天才ゆえに早くプロの世界に入ってしまったため、対局する機会はありませんでした。残念。

 藤井—澤田戦は大熱戦になりました。この将棋については後で別記事で書いてみたいと思います。結果だけ言うと、藤井四段が絶体絶命の局面を耐えて逆転勝ち。実力者澤田六段がさすがの指し回しで勝ちの目前に迫りましたが、藤井四段の怪しい追い上げに対して最後の最後で間違えてしまったようです。私としては、藤井四段が負けの局面を初めて見て、やっと彼の底が見えてきた気がして、少しホッとしました。きっとこれからまだまだ底は深まるのでしょうが・・・

 さて、この二局に勝ったことで、藤井四段のデビューからの連勝は20連勝に。これまでの「デビューからの」連勝記録である10連勝を大幅に更新していることはすでに忘れ去られ、「デビューから」という条件を含まない連勝記録28連勝にどこまで迫れるかばかりが注目されています。ちなみに20連勝は歴代6位の長さ。一つ上には3人が3位タイで並んでいて、22連勝です。

 また、藤井四段は竜王戦棋王戦の二棋戦で本戦トーナメントに進出することになりました。これでトップ棋士との対局がさらに増え、そこでどういう将棋を指すのか、非常に楽しみになりました。さらに、本戦トーナメントで優勝すれば、タイトル挑戦ですからね、そちらも楽しみです。ちなみに最年少タイトル挑戦記録は屋敷伸之九段の17歳、最年少タイトル獲得記録はこれまた屋敷九段の18歳6か月です。

 正直、私はこの最年少タイトル挑戦・獲得記録は、ずっと破られないだろうと思っていました。というのも、将棋史を見てみると、羽生三冠が出てきたあたりから将棋がどんどん洗練されて、まさしく序盤中盤終盤隙のない棋士が増えたからです。現記録保持者の屋敷九段も、羽生三冠と同じころ、ちょうど将棋の変わり目に出てきた天才少年でした。羽生三冠や屋敷九段を含む新世代が技術面でも記録面でも将棋をどんどん塗り変えていったわけです(ちなみに羽生三冠の初タイトル獲得は19歳)。そのような隙のない棋士たちに10代もそこそこで対峙し、タイトルを獲得するなんて不可能に思えました。

 そこに藤井四段です。若干14歳でこの隙のなさ、そして伸びしろ。本当に末恐ろしい棋士です。最年少タイトル挑戦・獲得記録を更新する可能性もかなり高いと思います。これからも目が離せません。

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