W杯 価値観

 W杯グループリーグ、日本対ポーランド戦で、日本が0-1で負けている試合終盤にボール回しに徹して話題になりましたね。日本としては、同時刻に行われていたセネガル対コロンビア戦のスコアが0-1でコロンビアリードのまま変わらなかったら、これ以上失点をしなければフェアポイント差でセネガルを上回り決勝トーナメントに進めるため、この選択を取ったようですね。同点に追いつこうとして攻めて反撃にあって失点するよりも、ボールを回して失点を増やさずに負ける方が、決勝トーナメントに行ける可能性が高いと判断したのです。もしセネガルがコロンビアに追いついたら勝ち点でセネガル、コロンビアを下回り予選敗退となっていたわけですから、同時進行で行われているその試合を見ながらの一種の賭けだったわけです。

 この判断をめぐって私のツイッターのTL上では二つの意見が見られました。なりふり構わず結果にこだわったことを称える意見と、つまらない内容だったことを非難する意見です。ここには結果を重視するか、内容・過程を重視するかの価値観の違いが見られます。

 実は私は今まさにこの価値観について考えているところでしたので、この議論はタイムリーなものでした。ちょうど私自身の考えがある程度まとまってきていたところでしたので、ここで備忘録代わりに簡単にそれを書いておきたいと思います。

 

 あらかじめ断っておきますが、以下に書くことは今回の日本代表の選択、あるいはそれについて意見している人たちの価値観とは全く関係のない話です。私個人の私個人のための価値観を私個人のためだけにまとめるものです。

 

 私は一年ほど前まではまさに結果重視の価値観でした。それは私が子ども時代に将棋という勝負の世界に身を置いていたことに起因するかもしれません。白黒がはっきりつく世界、勝たなければ先に進めない世界にいたから、結果を追い求める価値観が身についた気がします。しかし一年ほど前からその価値観の弊害に徐々に気がつき始めました。それで今、結果重視の価値観から内容・過程重視の価値観へと変更をはかっているところです。

 私が気がついた弊害は三つあります。

 第一に、単純に結果が出なかったときに落ち込んでしまうこと。結果重視の価値観だと目標の結果が出なかったときに落ち込んでしまいます。

 第二に、結果重視の価値観だと、結果以外の重要な部分を見逃してしまいかねないこと。たとえば目標優勝の大会で結果準優勝だったとします。そういう時に結果を重視する価値観だと、優勝できなかったという結果ばかりに注目して、準優勝するまで勝ったこと成長できたこと発見できたことなどを見逃してしまう可能性があります。それはかなり歪んだ見方であり、自分にとって重要なことを見逃していることになります。これは大きな損失です。(もちろん結果重視の価値観だけによってこういう歪んだ見方が引き起こされるわけではありませんが。)

 第三に、目の前の結果を追い求めるばかり、長期的に見てあまり良くない判断を下してしまいかねない点です。長期的な視点に立って判断を下すということはそもそも難しいことですが、目の前の結果に囚われると、自分にとって良くない選択をしてしまう可能性が高まると思います。

 以上が私が気がついた結果重視の価値観の弊害です。私にとっては第一、第二の点が特に精神的に良くなく、結果重視から内容・過程重視の価値観へと変えようと思いました。

 結果重視の価値観は、達成できたかできなかったか、勝てたか勝てなかったか、合格したか不合格だったか、という二元論的な見方をするという点で、全か無かの思考ともつながっていると思います。これは精神病理状態を継続させ得る認知の歪みの一つです。

 それに対して過程・内容重視の価値観では無、0の状態がありません。優勝はできなかったけどもここまでは勝てた、成長できた試合もあった、試験には受からなかったけども勉強する過程でこんな知識を得ることができた、能力・スキルを身につけることができた、と考えることができます。それは自己肯定感を高める、精神に良い考え方です。

 なお、当たり前のことながら、内容・過程重視という価値観の中にも、どの内容・過程を重視するかという問題があります。成長を重視するのか、楽しさを重視するのか、他者の幸福を重視するのか、(関係ないですが、日本代表に関連した話をあえて持ち出せば、美学、日本らしさを重視するのか)などなど。それは人それぞれ違うでしょう。内容・過程を重視するという価値観は共通の人たちでも、どの内容どの過程を重視するかは、十人十色でしょう。私は、私自身のそれに関しては、考え、感覚、価値観がまだまとまっていませんので、これ以上は書きません。

 さて、私は主に精神面への影響を理由に結果重視の価値観から内容・過程重視の価値観へと変更をはかっているわけですが、長年染みついた価値観は簡単には変えられません。今も頻繁に結果重視の考え方が顔を出します。また、内容・過程を重視した価値観の方が今の自分にとっては良いと思っているわけですが、立場や環境、体調が変わればこの考えもまた変わるかもしれません。このように価値観というものには最善のものはなく、絶えず変わってゆくものだと思います。大切なのは常に価値観を検討する姿勢を持ち、適時頭で考えることだと思います。考え続けることそれが大切だ、というのが今の私の考えです。

 以上、W杯の日本戦を見た人たちの反応をきっかけに、自分の価値観について書いてみました。